中国のちまた見聞録

中国を素のまま、生のまま捉える様に心がけました


 「淀みに浮かぶうたかたはかつ消えかつ結びて久しく留まることなし」
  今から5、6年前中国を通算2年をかけて旅行した。中国語でいう「旅游」である。

 日本のように圧倒的に単一民族が支配的である国に対して、中国の広大で且つ多くの少数民族を内に包含し、多少の矛盾はありながらも、国としての体勢を2000年間の長きに亘って続けてきたということは、それだけでも畏敬に値する。

 今回の旅は現実の姿に直接触れることにより、中国の良さと遅れた点を垣間見ることができたと同時に、日本との関係において改めて日本を見直すきっかけになったと思う。

 このブログはその時の記録である。これ以上無理解による反目が広がらないことを祈る。

     目指すは「坊ちゃん」と「ドクトルマンボウ航海記」    (李 白扇)
 

 
 

お犬様

 以前ある人から、「何かかくことがなくなったら、犬や猫のことを書け」と言われたことがある。別に書くことがなくなったわけではないが、犬のことを書いてみる。
 中国に入る前に、外務省の各国事情を記載したページを見ていたら、中国は狂犬病危険地域に指定されている。こりゃ大変とそのことを友人に話すと彼曰く「大丈夫だよ。中国人は犬を食べるので、そんなにいないよ」という。(これも中国人の名誉のために言うが、私は中国人を揶揄しようとしているわけではなく、文化の違いと認識しているだけのことであるから、あまり神経質にならんで欲しい)。
 「それもそうだな」と、狂犬病の予防注射は打たずに来た。この予防注射は、たとえ予防注射をしているにせよ、噛まれたらその時点でワクチンを打てというから、予防になっているのか、わからない。しかも犬だけではなく、猫にかまれても同じような処置が必要という。5,6年前だと思うがロシアで猫による狂犬病が大量発生し、政府の高官が猫にかまれ重体か、なくなったと聞いたことがあったので、それなりに恐ろしい病気であるのは確かなようだ。ネコでも狂犬病というのかな。大体犬による狂犬病に罹患した人は、犬と同じ挙動を取るといわれている。つまりワンワンと鳴いて走り回る。では、猫による狂犬病に罹患したらどうなるのか。「にゃあ、にゃあ」鳴いて、樹によじ登ったり、生の魚を口で咥えて、走り回ったりするのかな、なんて考えるとどうもこれは風聞にすぎぬと思うようになったが、猫でも狂犬病にかかるというのは事実だそうだから、ならば、「なんで狂猫病と言わないのだ」とつまらぬことばかり考える。やはり暇なのかな。
 ともかくこちらに入って気が付いたことは、確かに丸々太った旨そうな犬は見当たらないことだ。(ここでまた気になるのはこうして書くとすぐに「○●愛犬家協会」なるところから「なんと不謹慎な」というクレームが来るのではと恐れおののくのであるが、ともかくそう云った感じの犬は見当たらない。その代り、よく手入れされた、ご令嬢、ご令息然としたお犬様を割合多く見かけるようになった。「多く見かけるようになった」というのは、12,3年ほど前に商用で北京に行ったことがある。その時はがりがりに痩せた、あまり旨そうでない、どちらかというとこちらの方が食われてしまいそうな犬をそこそこ見かけ怖かったような気がするので、「見かけるようになった」と書いたわけだ。中国の食の文化に変化が出てきたのか、生活様式に変化が出て、お犬様の格が上がったのか聞いてみたいものだ。
 こういったお犬様ぜんとした犬をよく見かける一方、鎖に繋がれているが、やけに薄汚く、痩せて、人の顔を見たらやたら吠える犬も比較的見かける。これは犬というより人間の生活の反映であり、貧富の格差が見えてくる。人間そのものというより、犬を通して人間の生活様式の変化を探るのも面白いかも知れない。
 そう云えば最近日本では、ペットに異常に金をかける人が増え、ペットの犬が糖尿病とか、肥満、高血圧などの成人病ならぬ成犬病にかかっているということが言われている。こうなるともやは「たかが犬」どころではなく「たかが人間」という時代に突入しているのかもしれない。