今年の漢字「新」
日本漢字能力検定協会は今年の漢字は「新」であると発表した。アンケート結果による選定ではあるが、その選定理由として下記のいくつかの点が上げられている。
これらはいずれも時代の大きな流れを感じさせるものであるが、漢字能力検定協会自体についていえば、前理事長一族の数々の不正に対する糾弾を受け、新しく体勢を立て直したことの「新」を掲げる必要があろう。これらの腐敗の元は完全に断ち切ってしまっていることを期待する。そのことを明確に示すため、これを番外の理由として揚げてほしかった。
さてこの「新」という字であるが、右のような由来を持っている。
「甲文」は甲骨文字、「金文」は鐘や県(あがた)に鋳られたり彫られた古代文字、「小篆」は秦の李斯(りし)が整理したとされる古代書体の一つ、「楷体」現代の書体
中国の唐汉(唐漢)という人の書いた「汉字密码」(漢字の暗号)によると、甲骨文字は捕虜を拘束するための刑具をあらわす「辛」と曲がった柄の斧を表す「斤」の二つの記号から構成されている会意文字で、捕虜を護送した後、斧で首を切り落とすの意味である。ところで、捕虜から奴隷になると言うのは、一種の新しい命運の始まりで、それゆえ新の本意は新生であるとする。死から免れて新しい命運を始めることから、一般に新しいという意味に用いられるようになった。
漢字源によると、もう少し平和主義的で「辛」は鋭い刃物を描いた象形文字で、シンという音も表し、「木+辛」で木を切ることを表し、右の文字「斤」の斧とあわせ木を切ることとしている。切り立ての木を表し、生々しいということから新しいという意味を持つ。
ちなみに中国では今年の漢字は「被」と言われている。これは何事も自分の意思で決定できなく受身的な気持ちの表れと言われているが、果たしてどうだろう。「辛」というのは、捕虜を拘束する刑具であるというのが中国では通説のようだ。