中国のちまた見聞録

中国を素のまま、生のまま捉える様に心がけました


 「淀みに浮かぶうたかたはかつ消えかつ結びて久しく留まることなし」
  今から5、6年前中国を通算2年をかけて旅行した。中国語でいう「旅游」である。

 日本のように圧倒的に単一民族が支配的である国に対して、中国の広大で且つ多くの少数民族を内に包含し、多少の矛盾はありながらも、国としての体勢を2000年間の長きに亘って続けてきたということは、それだけでも畏敬に値する。

 今回の旅は現実の姿に直接触れることにより、中国の良さと遅れた点を垣間見ることができたと同時に、日本との関係において改めて日本を見直すきっかけになったと思う。

 このブログはその時の記録である。これ以上無理解による反目が広がらないことを祈る。

     目指すは「坊ちゃん」と「ドクトルマンボウ航海記」    (李 白扇)
 

 
 

生活苦


 同僚の教師が昼休みに食事に出ようと誘ってくれてついていった。彼は学校の近くのアパートに住んでいて、途中、牛肉の燻製、若干の野菜、ピーナッツ、ビールを買って帰った。そのアパートは彼の息子の物でその息子さんは現在別の街でエンジニアーとして働いているとのことであった。間取りは3LDKと非常にゆったりしていたが、中には何にも置いていなくて、コンクリートを打ったままにベッドと机が置いてあるだけで人が住んでいるという雰囲気はなかった。
 彼は奥さんとも離れて、単身赴任でそこに住んでいるとのことで、月収が1000元より少し多いと言っていたので、1200〜1300元といったところであろう。彼は中国人だからこれで生活できると言っていたが、それで、生活しているのかと聞くとそうだとのことであったが、奥さんへの仕送りはしていないと思う。
 彼は60歳で定年退職後この学校で働いているようであるが、月収は大体この職種ではこのようなところが相場のようである。以前、もっと若い教師に尋ねたところ、1500元だと言ってこぼしていたので、確かなところと思う。翻って、日本語教師の大体の相場は、45分ー1時間の1コマの値段が大体1000円とのことで、1週間20コマ、月80コマ持つと8万円になり、人民元に直すと5000元となる。従って、日本で扶養義務がない人で、自分一人だけの生活を考えていい人ならば、これだけあれば何とかやっていけるように見えるが、アパートは外国人が借りるとなるとまた大変みたいで、それ以外にも税金など、それなりの費用も嵩んでくることが考えられ、やはり相当な覚悟が必要であろう。
 そこで、当然の如く物価の話になった。10年前と比べると物価は食料品などは10倍以上、押し並べても3倍以上になっているとの感じであったが、給料は基本的に10年前と変化はないと嘆いていた。
 ちなみに住居費であるが、この辺りの一般的な住居は2LDKで買い取りでは月16−7万元であったのが、現在は30−40万元に跳ね上がっている。日本でも安いマンションならば1000万円で買えることから考えると、この30万ー40万という金額は少し異常ともいえるものでないかと考える。
それでも、揚州であるからこの値段で済んでいるのだろうが、上海などの都会になるととてもこれでは済まないのではと考える。南京に行った時に聞いた話だが、市の中心から離れた場所に立っている新しいマンションの金額は日本円で1000万ぐらいとのことであったので、この話も確かなものと頷ける。賃貸でも、現在では、独身男性が一人で借りれる値段ではないとのことである。
 今日の昼飯に食べた牛肉の燻製は10年前は2元/500gであったものが、現在28元とのこと。
 豚肉は0.74元/500gだったものが、8−9元に跳ね上がっている。ここまで聞くと、今食べたばかりの牛肉がのどに詰まってしまう感じで、おいそれとごちそうになれないなと思ってしまう。
 物価がこの状態で、賃金が抑えられているので、不満も大分溜まっているのではと素直に感じでしまう。
 それでも街ゆく人々は、それなど全く感じさせないゆったりと、しかしそれなりの喧騒で今日も過ぎてゆく。